2015年5月6日水曜日

細辛とカンアオイ

一応関連書籍を持っているので精確に記述することもできるけれども、あえて自分で解釈しているように書くと「細辛」と言うのは、カンアオイの中でも青軸素心の個体で特徴的な葉模様を持った登録品種のこと。・・らしい。

葉芸が重要なので、花による分類は関係ないし、品種によって区別されている訳でもない。であるので、緑茎・緑花(アマギは標準種が緑だが花は緑でない。花も緑の素心アマギも無論ある。作落ちしてるので写真は割愛)で規定されている葉の模様の中で新しかったり質が高かったりすると登録の対象となる可能性がある。

東洋蘭など山野草趣味者には山採りにこだわったりするが、そもそも江戸~明治期の古典園芸植物にあっては人工交配による作出種であっても綺麗であったり華美であったり怪奇であったりすれば、その出自は問題ない。家督さえ守られれば血脈は二の次のようなものなのか?


古典と言う語感が醸し出す純和風な印象ゆえに誤解を招くが、海外産のハーブや輸入観葉植物やわりといい加減に和唐交雑された植物群(観音竹、伊勢ナデシコ、美濃菊肥後六花、等)が古典園芸植物の正体である。

この流れにはオランダ商人経由の観賞魚でもある「金魚」も含まれるが、目下品種改良が急ピッチで進められている「国産メダカ」にはあくまで「日本産淡水魚」とどまり、この轍を踏んで欲しくない気もする。

ま、「菊」も「朝顔」もそして「金魚」も和柄の代表であるので、いまさら起源に遡ってどうこう言うのは、ナチズムとあんま変わらんのかも知れんけれども。


カンアオイと言うのは地域変異が多くて、未だに新種が発見される程微細な花の構造の差異などで種類が区別されるのだが、見慣れてくると、だいたいそれがなんなのか花や葉の形や質感や草姿で見当がつくようになる。

もっとも個体差もあるし、栽培環境によって葉の大きさや質感が変わったりもするので、やはり花で同定するしかないようである。

そもそも古典園芸の数寄者たちはカンアオイの花なんかどうでも良かったみたいであるし、実際細辛の主品種は葉模様の派手なカントウやヒメ系であるようで、花は小さく地味である。

花物のカンアオイが揃っている九州でも、葉芸となると微妙である。タイリン系は亀甲模様が結構あるが、紺色にならず巨大化するので草姿がいまいちで、オナガは蝶はあるが亀甲はないし、銀葉もほとんどない。

要するにどっちを取るかなのだが、その良いとこ取りをしようかと思ってカンアオイ栽培を始めたと言うのが実際の(不純な)動機である。そして、それはやるまいと最初の年以降数年来思い続けてきたのだが、自然交雑種の扱いについて、そしてそれが自家受粉した場合の子供の始末について悩み始めた。

自然交雑のテンナンショウならレアものだが、ウチでは容易に交雑してしまいそうだし、虫媒花なんて人工受粉する前にやられてしまったらどうしようもない。

人工交配のカンアオイは結構出回っているようで、悪意はないのだろうが困ったことにその出処が良く分からないものもあるようだ。山野草屋さんでもさすがに全てのものを同定できないようだし、購入元を信じるしかない面もあるだろうので仕方ないのかも知れんが、いち趣味者としては本当にやめて欲しい。まあ普通見分けがつくが、ヒメカンアオイの斑入りとタマノカンアオイの斑入りなんて下手すると桁が2つくらい違うのである。

それに品種間違いを指摘するとやっぱり嫌がられるみたいだし。やけに言い訳されたりして・・・だったらしっかりしてくれよ!と思わんでもないのだが、確かにその道のプロがシロートにイチャモンつけられたらムカつくだろうな・・・。取り敢えず、もし交雑種が出来てしまったら自己申告しておくことにしよう。その為のブログだし。

「細辛・葵錦」
本性品だそうである。結構高かった。
が、オナガ程ではない。
そんなことはどうでもいいか。
ででーん。控えおろう。
カンアオイにこれ以上の亀甲柄などないだろう。衿合わせも抜群で丸い。
日光を当てすぎたのか昨年まで小さな葉だったが、ようやく本気を出し始めてくれた。まだまだですが。
細辛を見ると斑入りカンアオイの方向性が正しくないと思うのはオレだけか。無論確かに綺麗な株もあるし結構丈夫な普及品もあるけれども。
せっかくなので亀甲の拡大写真を。
他にもカンアオイを同条件で栽培しているが、この紺緑は異質。
緑青のような銀色や派手なくせに渋みのある紋様など全体的な色合いがいかにも「細辛」。

カンアオイで似た色合いのものはあまり思いつかないが、「テイショウソウ」の色合いがこの銀と紺緑である。所持している「カントウ」は銀葉系が多いせいかあまりないのだが、四国産の「ナンカイ」や「ミヤコ」(だと思う)にはこの感じの色合いの寒葵がある。
葉質が革っぽく分厚くて普通の山野草なら羅紗葉扱いになりそうなぐらいなのだが、
カントウアオイ(基本種)では普通なのだろうか。
「モノドラ・美写紋」
こんな綺麗な植物が日本(西表島)に存在するのに海外の観葉植物を珍重するなんて、とか感動したくらいの「モノドラアオイ」の代表的な銘品ですが、いまだに本芸ではない・・・すんません。
なお2代目。
「モノドラ・最上模様」とか言うタイプ。
たしかに美写紋よりも綺麗かも。こちらの株の方が大きいのでやや良い状態。
「モノドラ・白美天」
購入時にすでに大きかったので状態良好。
「モノドラ・無銘」
作があがらないと葉模様がぼけていることもあるので、数年くらい持ち込まないとダメかも知れん。かなり小分けして比較的安価で販売されている場合もあるけれど、よほど慎重丁寧に世話できる環境がある人でないとあんまりお勧めしない。ウチなんかはあまり手をかけてやれなかったり、ナメクジの来襲などがあるので一晩で出てきたばかりの新芽をやられて壊滅したりするから。カンアオイだけに限らないがこれで何株も高価な斑入り植物等を殺ってしまったことがある・・・
「モノドラ・緑蝶」
・・・・でなかったかも知れん。
青軸の銘品「緑雲」と斑入りは所持していない。
「無銘」
たぶんそれになりに選抜されているのだとは思うけれども普通の株かも。
「無銘」↑個体と同じ。
ビロード状の葉質なので見え方が違う。
「細辛・胡蝶の舞」
本性品。まだまだです。
古典園芸植物には時代性か風格を求めるせいか異種・同銘があったりする。
それはそうとオナガには「蝶の舞」と言う葉芸品があり、かつ仮名品もあった(→変更されたそうだが、変更銘に同名仮名品もあるのでどうなったのやら・・・)。持ってないので写真がUpできなくて残念だが、全然違う。

ちなみにオナガの登録銘品には変わった名前が多くて命名された方の世代のせいかな~と思わないでもない。斑入りのカンアオイも歴史が浅いせいか同名や微妙な名前があるけれども。
このあたりは「錦鯉」と「金魚」あるいは「メダカ」的な命名問題と被る部分がある気がする・・・まあ時代性があって良いのかも知れんね。
「細辛・白光竜」
今年は見違えるように状態が良い。
まるでトカゲや恐竜の肌。ゴワゴワしていてざらついた和紙のよう。
それにこの葉模様。高価な銘品ではないけれど、「細辛」の凄みがある。
「細辛・白光竜」
実物見るとホントにすごいよコレ。
本気出した「細辛」まじぱねえっす。って感じ。


「細辛・三保の松」
コレもめっちゃすごい柄。
ごめん。札があるんだけど場所が合ってない気がする。蝶と谷があるから「敷島」ではないので一番近そうな細辛銘を。本性品でありさえすれば「銘品図鑑」見れば分かるのが、細辛の良い所。

ちなみに花物の「オナガ」も銘品は「葉模様」も選抜基準に含まれているようで、それによって個体識別が可能だと思われる。「東洋蘭」ではこうはいくまい。
「細辛・夜桜」
か「御所桜」かなんかだと思う。
粉でもついてるような質感でそれがざらついた手触りの元。野生種とはちょっと違う気がする。
羅紗葉の形質とか、どこかでいろんな血が交じり合っているのかも知れん。
となりに見える葉は実生のウラシマソウ。
「細辛・雪月花」
か、その実生?「カントウカンアオイの青軸」とかいう流通名がついている方かも。
葉質は薄くペラペラで、ツヤ消し度合いが高い。
「オトメアオイ」系ではないかと思う。
「雪月花」
かその実生?
こちらの方が緑が多いせいか、紺地の効いた↑の個体の方が細辛っぽい。
繁殖が良い。
「細辛・?」
銘品ではあるので、所持個体の名称と照らしあわせてあとで調べる。
「細辛・御所桜」
こっちが「御所桜」でいいのかな。
銀葉系でも普通なのが細辛のレベルの高さの証拠。
「(仮)細辛・昇竜」
実を言うと、これが一番好き。
目が眩みそうな程の蝶・枝谷・髭・アラレに緑の濃淡の多様さが凄まじい。
あえて語彙を封印して心情のみを述べると「めっちゃかっこよい!」

見本写真は紺地がべったりだが、実際にはこう言う色合いなんだな。
実物持ってないので違うかも知れんが、細辛の「三笠」が覆輪霰斑以外結構似た雰囲気らしくて、更にこう言う多色系の地模様に見える。ひょっとすると「昇竜」は「三笠」の実生選抜品かも知れんね。