2014年11月29日土曜日

2014年度の金魚交配記録のつづき


「蘭鋳型のパールスケール」
交配に交配を重ねるウチの出目真珠鱗花房系と入江氏のアルビノらんちゅう(武蔵野)♀との掛け合わせ。
そもそも掛け合わせるつもりもなかったので狙った訳ではないが想定通りの結果になった。

おそらく入江氏の系統の金魚には交配の過程でいろいろな劣性遺伝子が組み込まれていて、それがたまたまこの組み合わせで出てきたものだと思う。まあ、魚の影に花房の形跡も伺えるし、ウチの金魚にもほぼ全形質組み込んであるので交配相手次第では何がでても驚かない。

それと、ちょっとうれしいのが水槽飼育魚の割には、肉瘤や吻端の兆候が出ているので期待している。
武蔵野はらんちゅうとしての固定度合いが高めのようだ。アルビノ金魚はキャリコ金魚程選別を必要としないのだろう。


尾形とかは気にしている場合ではないくらい背なりが酷い中でわりと良いのが何故かパールスケール。
普通鱗のパールなので、体型以外一見しただけでは確認しづらい。
網透明鱗性のパールがやはり良いと思うし、一応その遺伝子を持っている親がパール系の先祖にいるので、なんとか落とさずに来シーズンに繋げたい。

パールの確認の為若干コントラストとかをいじったもの。

一部鱗が欠けたりしているのは、水換えの時に排水ポンプに吸い込まれたとかそう言った理由。これから水温が下がってくると頻繁に換水できないので、冬に入る前に急いで強制肥育している。

金魚飼育において気になる疑問、パール鱗は元に戻るのか?出目は再生するのか?とか検証したいと思う。

ちなみに、出目金とかで目がなくなってしまっても、摂餌が極端に悪くなるとは言うことはない。世間で言われる程目が悪くもなければ(水槽の外のものが落ちるのに反応したりする)、フナ型の方が餌を取りやすいこともない。

狭い水槽の中では方向転換が自在で一気に餌を溜め込める(フナは胃が小さいのか小食)丸手の方が有利な形質なのである。意外かも知れないが、ウチで一番貪欲でどんどん大きくなるのは大阪らんちゅうと協会系のらんちゅうだったりする。短い体にみっちりと肉がついていて体密度が高いのか、安定して押し負けることもなく底砂ごとバクバク餌を吸い込んで確実に喰らう能力に優れている。


「龍眼花房型のキャリコパール」
♂親は同じで、♀親に本東の血が入った系統のもの。
奇跡的に黒が残っている個体がいるが、次世代ではさらにキャリコから遠のく予定。
色揚げ用の餌も混ぜているせいか、橙色は結構乗っているが、いまひとつキレが良くない。

見た目は数年前の魚と大差ないので回り道をしているようだが、水泡以外のすべての劣性形質がONになっているし、一応一直線に目標に向かっているつもり。
最終的にはあの本東特有の上品な空色を取り戻したい。そしてそれを繁殖期の5年くらいは維持したい。

小さめだが花房も確認できる個体が混じっているので、数年後には大阪らんちうのそれ程度にはなっている筈。

2014年11月23日日曜日

和の多肉と多肉扱いの球根

「ツメレンゲ」
イワレンゲ」も栽培しているがそれとは姿が異なるのでおそらく。
九州産のセッコクにくっついてきたおそらく野生実生のもので、最初は気にも止めていなかったが環境が合ったらしくどんどんデカくなってしまった。

セッコクの育て方が全然わからずいろいろ試した結果、相当数を枯らしてしまったのだが、一番良いのは、午前中だけ日光のあたる東側に購入した時のまま雨ざらしで放置しておく事であった。
たぶん銘品とかはまた別の管理が必要なのだが?
けっこう派手な花である。観賞価値もあると言えるかも。
「イワレンゲ」
斑入りのイワレンゲの銘品なのだが、これだけ調子がいいのかぐんぐん伸びてこの通り。

花はまあ地味。
斑入りのツメレンゲもあったのだが、大きくならず開花していたのは覚えているが、後に消えた。多湿で根腐れでもしたような感じであった。イワレンゲの方がやや水を好む気がするが、根が湿潤状態でいるのは良くないようだ。
葉挿しとか出来るらしいが、どうしたもんかアイデアがわかないので積極的に行っていない。
いずれ後悔することになるかも知れんね。

開花すると枯れてしまうような事を読んだ気がするのだが、どうにもする気にならないので放置。
運が良ければ↓に置いてあるラケナリアの鉢から生えて来るかもしれない。
「ラケナリア・プシッラの実生芽」
前回種をつけていたものを面倒なのでバラバラ鉢に播いておいたら、この通り。
込みすぎ。

実生の実生なので、当地の環境にすっかり馴れた模様。
実は、この他のいたるところからラケナリアの芽が出てきていて、半分雑草と化している。
プシッラの写真を検索すると立ち葉のものを見かけたりするが、うちのはもともと譲っていただいた株からペッタンコで葉が立った試しがない。

ラケナリアの中でもヘンテコな佇まいだが、葉っぱはやっぱりラケナリア。
そしてなぜか・・・・・・香る。あれ?
うろ覚えの記憶では、マッソニアは香っていたのだがラケナリアは無臭だった筈なのだが、やはり交雑できていたのかなぁ・・・分からんけど。
と思ったらそうでもない参考『空中庭園+HAWORTHIA.JP+』さん)らしい。

その他のラケたち。
手前のはカルノーザ。実生なので多少個体差がある。
なかなか風格が出てきた。
干からびかけているが、セッコクと大体同環境の野ざらしで育てている。
特に地上部がなくなっている時期はまったくの放置。楽ちんである。

2014年11月1日土曜日

「西日本のフナ属魚類 オオキンブナをめぐって」谷口順彦氏

昨年から今年にかけて、ヒブナや鉄魚を全て落としてしまったショックで、ほかのフナ類も譲ってしまってフナの飼育は封印することとした。

いくつか分かった事は、北海道産のフナでも真夏の40℃近い高温にも耐えること、逆に低温に慣れているかと思うとそうでもないこと。

全然性成熟しないこと。つまり、♂なのか♀なのか分からん。
そもそも「関東産のキンブナ」すらブリード出来なかった。ただし、追い星は確認した。♀が充分に育たなかったらしい。

環境も良くないのだろうが、自家産金魚はそれでも累代できているので、ようは慣れの問題だとも思う。

さて、当面は飼育スペースを縮小したため金魚交配に専念するつもりだが、国産とは言えやはりメダカはどうしても好きになりきれない(人工受精出来ないのが痛い)し、所詮金魚は長江起源の外来種フナであると言うのは常に頭の隅から抜けない。

であるので、フナ飼育も再開したい。ただ、外来のフナとの雑種やら、3倍体のフナはもういい。
「キンブナ」か「オオキンブナ」、金魚との雑種起源でない「本物のテツギョ」(おそらく「ヒブナ」も同様に「オオキンブナ」の変種)をなんとか手に入れたいと思う。

どなたか心当たりのある方はおらんのだろうか・・・・それともやっぱり純系のフナ由来のヒブナやテツギョなんて存在しないのだろうか。


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財団法人 淡水魚保護協会機関紙 「淡水魚8号」
「西日本のフナ属魚類 オオキンブナをめぐって」谷口順彦氏   より、大雑把に抜粋。

冒頭、筋漿蛋白電気泳動像での遺伝子型識別についての妥当性等について書かれている。
その結果が以下。

[Ⅰ型]
:オオキンブナ(Carassius buergeri buergeri 西日本~北海道?
:キンブナ(Carassius buergeri subsp-A 本州関東以北
:ナガブナ(Carassius buergeri subsp-B 諏訪湖
:ニゴロブナ(Carassius buergeri subsp-C 琵琶湖

[Ⅱ型]
:ギンブナ(Carassius langsdorfii) 日本全国

[Ⅲ型]
:ゲンゴロウブナ(Carassius cuvieri) 全国(琵琶湖由来)

[Ⅳ型]
:ヨーロッパブナ(Carassius carassius)



「Ⅰ型」はキンブナとオオキンブナが含まれ、第一バンドの濃度が高く、第五、第六バンドの濃度が低い。ナガブナ及び、ニゴロブナは第五バンドの濃度が相対的に高めだが、Ⅰ型に含まれる。

「Ⅱ型」は「東日本のギンブナ」Ⅱ-1や「西日本のギンブナ」Ⅱ-2が含まれ、第五バンドの濃度が著しく高い。Ⅱ-3型は、第三バンドが第四バンドのほぼ半分の濃度。Ⅱ-4型は、第四バンドが第三バンドのほぼ半分の濃度で、霞ヶ浦の「キンブナとギンブナの中間型」に現れる。

「Ⅲ型」は「ゲンゴロウブナ」及び養殖用品種の「カワチブナ」琵琶湖以外で採取されたゲンゴロウブナを含む。第五バンドの濃度が高く、第一~第三バンドを欠く。

「Ⅳ型」はヨーロッパブナに特有。第一バンドが高く、第五バンドが低い点でキンブナに、第二バンドを保有する点で西日本系のギンブナに似る。また、全体的に鯉の泳動像により良く似ている。




以下、ざっくりと要約すると、

・「オオキンブナ」は2倍体。
・東日本及び西日本の「ギンブナ」は雌性発生の3倍体。
・従来「ギンブナ」の性比が場所によって異なっていた(少数の♂がいるとされていた)のは、「オオキンブナ」の存在が正しく認識されていなかった事がうかがわれる。


・霞ヶ浦の「キンブナ」を形態的に同定したものは、すべてⅠ-B型であり、逆にⅠ-B型と判定されたものも、すべて「キンブナ」の特徴的な形態を示した。体型や体色に見られる差が遺伝的であることを示唆している。
・西日本のフナにおいて、外形や体色によって常に「オオキンブナ」と同定されたものは、Ⅰ型で、「ギンブナ」と同定されたものはⅡ-2型だった。
・西日本のギンブナはほとんどⅡ-2型だったが、「児島湖」だけはⅡ-1、Ⅱ-3、Ⅱ-4などが認められた。


・「オオキンブナ」は「ギンブナ」と比べ、背鰭条数・鰓耙数が少なく、背鰭基底長が短い。「キンブナ」「ギンブナ」の種間差傾向が保持されている。
・筆者(谷口順彦氏)は「オオキンブナ」を西日本系のキンブナと称してきて、「ナガブナ」にあたるのではないかと考えた事もあったが、諏訪湖で採取してきた「ナガブナ」の鰓耙は著しく多い。「ナガブナ」はむしろ「ニゴロブナ」に似ていると言うのが筆者の印象である。
・「オオキンブナ」は、東日本のキンブナに種々の形質がよく似ているが、測定値に差が認められた。最も大きく異なるところは著しく大きくなるところなので、オオキンブナ(落合他、1979)と称することにした。

・オオキンブナとギンブナの差は相対的なものであって、採取地によって体型や体色がかなり変化する。同一採取地、同一サイズであれば比較的容易に同定できた。また、大型個体程両種の差は顕著となる。

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と言うわけで、外見からほぼ同定が可能であるようであるのはうれしい。

なお、オオキンブナとキンブナの比較写真が何点か載っているが、白黒写真ではほとんど区別できない。背鰭基底長に明白な違いが見えるものもあるが、むしろ採取地ごとの差異の方が目立つ。

例えば諏訪湖のナガブナとギンブナでは、両者とも顎がシャクレ気味になっている(当ブログで北方系のキンブナ・ナガブナ系とか称しているタイプに似ている)。若干、背(肩)が低めであるような気はするのだが、違う採取地のものではまた違う。全体的に見て、顔(頭)が胴体にくらべてやや大きめな雰囲気はある。・・・かも知れない。

岡山産のギンブナについては、別の文献でも見たような気がするのだが、児島湖は人造湖なようなので、人為的な撹乱(移入種)があって谷口氏の試験結果がもたらされているのかなぁと思ったりもした。

より新しいフナ類の研究文献には3倍体は、2倍体群から常に発生しているような意味の事が書かれていた気がするので、閉塞環境に置かれたオオキンブナとギンブナ。あるいはオオキンブナから発生してきた新たな3倍体クローン群とかなんとか。

なんであれ育種家としては、純系の2倍体であって改良・改変の余地があればそれでいいのだ。(パールスケールの起源が南方であると言うのを、ネットのどこかで見た気がするのだが、金魚はひょっとすると雑種ではないかと思ったりもする)