2014年11月1日土曜日

「西日本のフナ属魚類 オオキンブナをめぐって」谷口順彦氏

昨年から今年にかけて、ヒブナや鉄魚を全て落としてしまったショックで、ほかのフナ類も譲ってしまってフナの飼育は封印することとした。

いくつか分かった事は、北海道産のフナでも真夏の40℃近い高温にも耐えること、逆に低温に慣れているかと思うとそうでもないこと。

全然性成熟しないこと。つまり、♂なのか♀なのか分からん。
そもそも「関東産のキンブナ」すらブリード出来なかった。ただし、追い星は確認した。♀が充分に育たなかったらしい。

環境も良くないのだろうが、自家産金魚はそれでも累代できているので、ようは慣れの問題だとも思う。

さて、当面は飼育スペースを縮小したため金魚交配に専念するつもりだが、国産とは言えやはりメダカはどうしても好きになりきれない(人工受精出来ないのが痛い)し、所詮金魚は長江起源の外来種フナであると言うのは常に頭の隅から抜けない。

であるので、フナ飼育も再開したい。ただ、外来のフナとの雑種やら、3倍体のフナはもういい。
「キンブナ」か「オオキンブナ」、金魚との雑種起源でない「本物のテツギョ」(おそらく「ヒブナ」も同様に「オオキンブナ」の変種)をなんとか手に入れたいと思う。

どなたか心当たりのある方はおらんのだろうか・・・・それともやっぱり純系のフナ由来のヒブナやテツギョなんて存在しないのだろうか。


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財団法人 淡水魚保護協会機関紙 「淡水魚8号」
「西日本のフナ属魚類 オオキンブナをめぐって」谷口順彦氏   より、大雑把に抜粋。

冒頭、筋漿蛋白電気泳動像での遺伝子型識別についての妥当性等について書かれている。
その結果が以下。

[Ⅰ型]
:オオキンブナ(Carassius buergeri buergeri 西日本~北海道?
:キンブナ(Carassius buergeri subsp-A 本州関東以北
:ナガブナ(Carassius buergeri subsp-B 諏訪湖
:ニゴロブナ(Carassius buergeri subsp-C 琵琶湖

[Ⅱ型]
:ギンブナ(Carassius langsdorfii) 日本全国

[Ⅲ型]
:ゲンゴロウブナ(Carassius cuvieri) 全国(琵琶湖由来)

[Ⅳ型]
:ヨーロッパブナ(Carassius carassius)



「Ⅰ型」はキンブナとオオキンブナが含まれ、第一バンドの濃度が高く、第五、第六バンドの濃度が低い。ナガブナ及び、ニゴロブナは第五バンドの濃度が相対的に高めだが、Ⅰ型に含まれる。

「Ⅱ型」は「東日本のギンブナ」Ⅱ-1や「西日本のギンブナ」Ⅱ-2が含まれ、第五バンドの濃度が著しく高い。Ⅱ-3型は、第三バンドが第四バンドのほぼ半分の濃度。Ⅱ-4型は、第四バンドが第三バンドのほぼ半分の濃度で、霞ヶ浦の「キンブナとギンブナの中間型」に現れる。

「Ⅲ型」は「ゲンゴロウブナ」及び養殖用品種の「カワチブナ」琵琶湖以外で採取されたゲンゴロウブナを含む。第五バンドの濃度が高く、第一~第三バンドを欠く。

「Ⅳ型」はヨーロッパブナに特有。第一バンドが高く、第五バンドが低い点でキンブナに、第二バンドを保有する点で西日本系のギンブナに似る。また、全体的に鯉の泳動像により良く似ている。




以下、ざっくりと要約すると、

・「オオキンブナ」は2倍体。
・東日本及び西日本の「ギンブナ」は雌性発生の3倍体。
・従来「ギンブナ」の性比が場所によって異なっていた(少数の♂がいるとされていた)のは、「オオキンブナ」の存在が正しく認識されていなかった事がうかがわれる。


・霞ヶ浦の「キンブナ」を形態的に同定したものは、すべてⅠ-B型であり、逆にⅠ-B型と判定されたものも、すべて「キンブナ」の特徴的な形態を示した。体型や体色に見られる差が遺伝的であることを示唆している。
・西日本のフナにおいて、外形や体色によって常に「オオキンブナ」と同定されたものは、Ⅰ型で、「ギンブナ」と同定されたものはⅡ-2型だった。
・西日本のギンブナはほとんどⅡ-2型だったが、「児島湖」だけはⅡ-1、Ⅱ-3、Ⅱ-4などが認められた。


・「オオキンブナ」は「ギンブナ」と比べ、背鰭条数・鰓耙数が少なく、背鰭基底長が短い。「キンブナ」「ギンブナ」の種間差傾向が保持されている。
・筆者(谷口順彦氏)は「オオキンブナ」を西日本系のキンブナと称してきて、「ナガブナ」にあたるのではないかと考えた事もあったが、諏訪湖で採取してきた「ナガブナ」の鰓耙は著しく多い。「ナガブナ」はむしろ「ニゴロブナ」に似ていると言うのが筆者の印象である。
・「オオキンブナ」は、東日本のキンブナに種々の形質がよく似ているが、測定値に差が認められた。最も大きく異なるところは著しく大きくなるところなので、オオキンブナ(落合他、1979)と称することにした。

・オオキンブナとギンブナの差は相対的なものであって、採取地によって体型や体色がかなり変化する。同一採取地、同一サイズであれば比較的容易に同定できた。また、大型個体程両種の差は顕著となる。

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と言うわけで、外見からほぼ同定が可能であるようであるのはうれしい。

なお、オオキンブナとキンブナの比較写真が何点か載っているが、白黒写真ではほとんど区別できない。背鰭基底長に明白な違いが見えるものもあるが、むしろ採取地ごとの差異の方が目立つ。

例えば諏訪湖のナガブナとギンブナでは、両者とも顎がシャクレ気味になっている(当ブログで北方系のキンブナ・ナガブナ系とか称しているタイプに似ている)。若干、背(肩)が低めであるような気はするのだが、違う採取地のものではまた違う。全体的に見て、顔(頭)が胴体にくらべてやや大きめな雰囲気はある。・・・かも知れない。

岡山産のギンブナについては、別の文献でも見たような気がするのだが、児島湖は人造湖なようなので、人為的な撹乱(移入種)があって谷口氏の試験結果がもたらされているのかなぁと思ったりもした。

より新しいフナ類の研究文献には3倍体は、2倍体群から常に発生しているような意味の事が書かれていた気がするので、閉塞環境に置かれたオオキンブナとギンブナ。あるいはオオキンブナから発生してきた新たな3倍体クローン群とかなんとか。

なんであれ育種家としては、純系の2倍体であって改良・改変の余地があればそれでいいのだ。(パールスケールの起源が南方であると言うのを、ネットのどこかで見た気がするのだが、金魚はひょっとすると雑種ではないかと思ったりもする)

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