2012年7月17日火曜日

斑入りと栽培品種のあれこれ

「斑入り植物の観察と栽培」 著 広瀬嘉道と言う本を手に入れた。


小さくて薄い本だけども、中身は濃い。


最近同氏の「 斑入植物集 」via すてき葉っぱたち全三巻(写真がたまり次第四巻も予定とか。斑入り植物の写真をお持ちなら提供して欲しいとのこと。実生で何かオリジナルが出来たら記録しておこう)を手に入れることが出来たのだが、これがありとあらゆる「斑入り」の植物の写真が載っている。

山野草屋さんの通販や、ネット・オークションなどで「斑入り」や「古典植物」の情報へのアクセスは大幅に敷居が下がったと思われるが、古典園芸種、普及種から、洋種、サボテン、多肉植物と網羅されているのはやはり書籍ならでは。


ただ、本のサイズの割にはあんまり写真が大きくなく(斑入りの場合は、全体像と部分の拡大がないと分かりにくいものもある)、記録の為の写真であったりするせいか、レイアウトがいまいちで、山野草の専門雑誌など程美しさが伝わってこない。


また、学名順に並んではいるのだけど、草木関係なくグチャグチャに混在しているので見にくい。
有る意味専門書なので、これでいいのかも知れないんだけど、同様に、ありとあらゆる多肉植物の写真をブチ込んだ「多肉植物写真集」国際多肉植物会刊は見やすく、物欲をそそるので、余計に残念。






英訳も一緒に書かれており、一部無銘の古典植物に英語で命名してしまっているのが、「出来るだけオリジナルに忠実に」をモットーとしている私個人的に気持ちよくなく(パンダの名前だって中国語でしょ)、内心翻訳に細かい突っ込みを入れながら眺めていたのだが、古典園芸植物も含めた園芸用語や内外の専門家の寄稿文を丁寧に英訳・翻訳してあるのが素晴らしかった。




と言うか、自分でも読み方が怪しいものがあったけど、やっとスッキリしましたよ。「後冴え」なんて、「あとざえ」って読んでたし。「のち」でした。




で、まあ小さい方の本は、写真集の超ダイジェスト版みたいなところもあるのだけど、ちょっと面白い部分があったので、抜き出してみる。



:黄色斑は、日照が不足すると青っぽくなる。(ヒトツバやツワブキの黄斑で同じ事を聞いた)


:刈り込みを受けた後の芽生えから、枝変わりが発生することがある。(広重美術館のイチョウから、一枝ユーレイになっているのが出ていたのを見た)


:斑入りは父性遺伝することもある。




マジですか?花粉親ってことですよね。ご本人の実験結果によるものだが、棘の無いサボテンである アストロフィツム属の兜の黄掃込み斑が遺伝したとのこと。他の植物ではどうなんですかね。





あと、どこかで読んではいたけど、ハオルチア(表記揺れがあるのだけど、ハウォーシアとか英語読みするのだけは正確ではないと思う。本来ラテン読みでは)多肉の斑入り作出にあたって、斑入りの別種と交配させてから、戻し交配によって元の形に戻すのを許容するのは、なんとなく気になる。




日本の古典園芸植物は、純粋種の中の変異体の抽出が重視されていると思う。




交配によってではなく、あくまで基本種の実生。それも「雪割草」や「春蘭」の本を読んでいると、山採り天然の突然変異の方が珍重されていた気配が濃厚にあるんだけど、そこが敷居が高くてそっとしておいてもいい気もする。無論、それによって自然絶滅させてしまうのはやり過ぎだけど。








対して欧米の方は、種間品種とかの交雑種がメインのようだ。まあ、自生してもいない植物を世界中から集めてきたらそうなるよな。なので、日本のサボテンやハオルチアはこっちの方なのだろう。


突然変異を強引に誘発させる為の「放射線」や「化学物質」の使用も厭わないと言うところは、科学技術の未来に夢と希望があった頃の発想だなあと思いつつ、桜の新品種を作り出すのに「ガンマ線」* を照射したとか、「グッピー」や「メダカ」の品種の作出過程でも行われていた(いる?)らしいので、まあお手柔らかにとしか言いようがない。


* ガンマ線を浴びた人間の場合の一例




ただ、純系近親交配の動植物は虚弱化する傾向があるものもあるし、完全に野生のものと栽培していったものが数世代後に同じかと言うと、やっぱり似てはいても違うだろう。何らかの人為的な選択が行われているだろうし、それはつまり栽培品種と化している筈。


蘭なんかでは シブリングクロス と言うらしいし、熱帯魚なんかの選抜交配も同じだろう。このあたりのジレンマは、また金魚と鮒のところで悩む。





今や、属間雑種で、本来種子形成できないものを途中から胚培養してしまうなんて技術もあるようで、それはそれですごいんだけど、いくら問題ないくらい良くても「本物」と「そうでないもの」には精神的になんか抵抗感がある。




MP3の音楽配信を利用する気になれないのはそんなところ。waveファイルでの配信なら買うのになあ。


























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