2016年2月13日土曜日

愛鷹山嶺

「アシタカカンアオイ」が見たくて愛鷹山まで行ってきた。

よくよく考えてみると愛鷹山だからアシタカなのか足高だからアシタカなのかすら知らなかったのだがそう思い込んでいた。


確認もせずに。


「アマギカンアオイ」は天城山より別の山の方が多いと書かれていたりするのだがこちらも同じだろうか。ぐらいにしか考えていなかったが早計であったやも知れぬ。


林道は崩落注意とか通行止めで完全に閉鎖されていて入りようもなかったり山肌にネットがかけられていたりしてかなり危険な様子。路上の落葉からして交通量は少なそうなわりには訪山者を見かけしかも不法投棄も多く環境がよろしくない。全体的に殺伐とした雰囲気。


林道脇に車を止めてちょっと林の中に分け入るが何にもなくあまり手が入れられていないせいか歩くこともままならずしかも斜面が急だったりして危ないので諦める。

しかし植物相は既知の山とは少し違い、他ではあまり見かけなかったシュスラン属が多めに見られたのがうれしかった。

「斑入りのテイカカズラ?」
山を手入れするがてら山採りもされる方に「何時間も山歩きをしても斑入りなんて全然見つからないんですがそんなによく見つけられますね・・・」と尋ねてみたことがある。何か特殊な条件でもあるのかと思ってそれを伺いたかったのだが、「結構ありますよ。」とのあっさりしたお答えであった。その時はそんなもんかなあ・・・と思ったものだった。ま、こうしてみると単純に経験の差なのか。なるほど見つかる時は見つかるものである。でもなんなのか分かりません。葉長1㎝にも充たない微小苗。なお、環境の厳しい所に変異体が多いと言うような事をどこかで読んだ。また力技でとにかく目一杯大量に実生すると変わりものが出る。とか。基本的には確率の問題なので当然だが。

テイカカズラと言えば、以前別の山で見かけたキッコウハグマかなんかの種と思っていたものがどうやらテイカカズラの種(参照:植物雑学事典)らしいことに最近気づいた。園芸種の「ハツユキカズラ」の逸出とかだったりして・・・こんな山奥まで飛んできたのだとすれば凄いことなのかも。
実際見た感じはこんなもん。ベニシュスランかと思った。ただの雑木である(ツルマサキかも)と思うのだが記念に。もっともただの雑草・雑木に斑入りや変わり物と言う価値観を与えて園芸化すると言う江戸の古典園芸の視座はパラダイム変換であった。ガラパゴス化と言うのは個人的に大好きなのだが。究極って言葉はまさにその為にあるとも思うが如何か。

基本種である「チリメンカズラ」(参照:ほのぼのと盆栽しましョさん)は盆栽になると大層立派になるようだがこのサイズから見られるようになるには生きていられるかも怪しい・・・。こんな半ツル性の植物や海浜性のハマゴウなんかもヒョロヒョロと徒長してしまうが強健と見えて切り詰めて盆栽化できるらしい。ほぼ幹しか残さないで剪定してゆくなんて考えようによってはドSだよな。継続的に管理しきれないので半分放置の大鉢植えであったが置き場所ももう限界なので盆栽そろそろ考えてみないとならないかも。カンアオイなどは大鉢では逆に作落ちするんじゃないかと言う気もしてきた。地植えと鉢植えではやはりどこかなにかが違うらしい。せめて1~2週間は放置でも出来れば小鉢に切り替えたい・・・
「ベニシュスラン」
だと思う。うじゃうじゃと言う程ではないが、まとまって数株見つけた。
シダしか生えないような暗い場所からちょっと開けて明るい場所にあった。
「ベニシュスラン」
砂土植だと細根が張っていないせいか簡単に抜けやすく、草体も柔らかく根本から腐ったり、ナメクジやダンゴムシ等に食害されて上部だけが生き残ったりする。そしてその茎が簡単に挿し芽出来る。
栽培中に薄々思っていたのだが山中でも根の取れてしまっている個体を確認。これすらも繁殖の一端を担っているとほぼ確信したのだがどうだろうか。
「ベニシュスラン」
地味めの亀甲~無地葉ばかり。
「ベニシュスラン」
「ミヤマウズラ」と「シュスラン」の交雑種である「ガクナン(交雑種ではなく別種と言う説もあるそうな。参照:草のゆりかごさん)っぽい気もしないでもない。ベニシュスランとミヤマウズラの交雑種もオークションに出ていたので条件さえ合えば可能性はあるのだろう。
「ベニシュスラン 種鞘」
この形態(1つ)からしてベニシュスランであっていると思う。
まだ種が残っていて、写真を撮ろうと持ち上げたらフワフワと舞った。さすがに種をいただいても実生は出来そうにないしせっかくなので周りにばら撒いておいた。
増えるといいなあ。開花期に見に来たいとも思うが二度と来ないかも。
「ベニシュスラン」
あまり亀甲柄がはっきりしている個体が見られないが、葉が薄く総体的に知っているベニシュスランのそれである。以前、オオキンブナの同定についての文献をしたが、単体でなく群れ全体で見ると言うのは大切なことだろうと思う。個体差と言うものがあるのだし。
「ベニシュスラン」
濃紺地にちょっとぽってりとした葉質で銀葉っぽい照りをしていてこちらも「ミヤマウズラ」と交雑しているのかな?とも思ったが、ここでは見かけず。
「ミヤマウズラ」は栽培したこともないし実物を見たこともないがネットのおかげでサンプルはたくさん見ているので葉っぱだけでもなんとなく両者の違いが分かるようになってしまった。基本的にはカゴメ模様と葉や草体の雰囲気で区別しているのだがやはり実物をみると微妙な差異や、状態の違いで悩むものもある。

そこが面白いし、採取されてきた一部のサンプルだけ見て同定なんて出来ないやとも思うのである。
「ハカタシダ?」
自信がないのだが、斑の入っていないハカタシダだと思う。
他の山では見かけないがここには少々あった。

写真が前後しているが、ベニシュスランの前に発見。ツヤツヤと輝いている。
こんなんばかり。冷蔵庫や電卓まで落ちてると言う・・・
「シカの糞?」
カモシカの糞とは雰囲気がことなる気がする。春蘭など山野草も食害されているとのことだが・・・
「ミヤマウズラ」
初の生ミヤマウズラである。このウズラ模様からしてベニシュスランではない筈。
ベニシュスランとはだいぶ離れた場所にあったのですくなくともこの両者は交雑してはいないと思う。


「ミヤマウズラ」
で合ってると思うのだが、葉模様だけ見るとどうしてこれをベニシュスランだと思わなかったのか自分でも良く分からん。茎の色(ベニシュスランは素心個体でないと通常泥軸)とか葉の付け根とか蝋細工っぽい質感からしてミヤマウズラだと思うが・・・。


「アシタカカンアオイ(?)」
歩き周ってようやく一株みつけた。葉質からしてオトメアオイ系であるのはまず間違いないのだが、愛鷹山のカンアオイであってもアシタカカンアオイではないかも知れず。
もう絶対見つからないと思っていたので心底ホッとした反面、これ以外にまったくいない。いつもなら発見できるような環境であるのに・・・おかしい。

しかしよく考えてみると自分で見かけるカンアオイって大株がまったくない。いつも実生苗みたいな感じである。もしかして探し方が根本から違っているのだろうか・・・・


さらに奥まで行こうと思ったが方角をロスト。人間の形跡は濃厚にあるにも関わらずまったく人の通った形跡のない落葉。
なんと言うか樹海の横っぽい。この先に行ったら帰ってくる自信がないので諦めた。
実際戻る途中で迷いかけて動転した。私のようなシロウトが一人でゆく場所ではない。


「アシタカ?」
さすがにここまでやってきてあれだけで引き下がる訳にもゆかず、林道からあまり分け入らないあたりをウロウロして、廃棄物の中にようやく別のカンアオイを見つけた。下り藤でアシタカとされるものにも良くある葉模様である。オトメ系にそもそも多い柄で、アシタカも学名的にはその変種


寒葵の移動速度は遅いと言われていて、それを根拠に地域隔離が進み変種が生じたそうだが本当に細分化して分類しなければならないのか不安になる。少なくともウチではたった1年で30cmは移動している。アリの行動範囲を観察してみたことがあるが、数分で5m以上を行ったり来たりしてますよ。受粉と播種とは別の方法を取ってることは考慮されているのかな。
「ズソウカンアオイ?」
運良く花のついている個体を見つけたが、開口部が狭く残念ながら「
アシタカ」ではない気がする。他にも花があれば比較出来るのだが。周囲に少し実生苗らしきものを見かけたが無地か地味な柄ばかり。ちょっとこの個体と雰囲気が違う気もするがサイズのせいか?
しかし少ない個体数の中でも亀甲柄の個体もあったのでやはりオトメっぽい。おそらく亀甲発現の遺伝子が組み込まれているのだろう。黒柴みたいなものか。まったく亀甲柄が出ない「アマギ」や「オナガ」のようなカンアオイ群もいるのが面白いが。アマギによく似た海浜型厚葉の「タマノカンアオイ」には亀甲があるのが不思議だ。「ランヨウ」あたりと交雑しているのか、遺伝子座のどこかにスイッチがあるのだろうか。
「黒葉のシダ」
リュウビンタイっぽいなあと思ったのだがなんだか分からん。たぶん調べれば分かるが今のところはまあいいや。寒さで変色しているだけのようでまだらになった株も多く見つけた。
山採りカラス葉シダとか言われて間違えないように。シダ類はあぶない。 

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