2016年2月20日土曜日

怪しい菌液の威力

松葉蘭 麒麟角」
そこそこの株立であったのにたった2本になってしまった・・・(*前回の麒麟角とは「別株」。一番好きな品種なのでいくつか所持)ものすごく作落ちさせてしまってもうダメかと思っていたが、あの黒い菌液やら、塩蔵ワカメ入りの塩菌液やらをやりまくったらば、


根茎からウジャウジャと新芽が上ってきた。
数えようと思えば数えられるが、敢えて言おう。数えきれんよ。
春には元通りかそれ以上になっていそうだ。

古典園芸植物は株分けが基本なのですべてクローン。なので「別株」と言うと語弊がある気がするが、「麒麟角」は芽変わりが出やすいそうでいろいろな形態を表現する。

実際ウチでも「麒麟獅子」(こちらも作落ちで絶えそう・・)っぽく極太軸に途中から細い分岐が出るものもいれば、「青珊瑚」(未所持)っぽい枝分かれが少ないもの、本物のサンゴっぽく太軸でも全体的に分岐するものや、「福禄寿」(枯れた)的に細めのものなど出る。

ひょっとして上記の品種も元々は一つの株だったなんてことも無きにしもあらず?すくなくとも株元に胞子が落ちて実生苗が出来てしまうともう分からんと思う。マツバランの根茎は他の植物とは異なる独特な形態をしていて絡まりあったら大変。

作の影響はあると思うが、肥培しても太さ以外は各形態に変わりがないように見える。それぞれを「変わり」が発生している部分で分離したいと思うが固定できるかどうかは分からない。

また、ずっと気になっているのだが、芽変わり品の椿は、オリジナルの椿と交配可能(参照:果樹の受粉マニュアル)なのだろうか?つまり遺伝的な隔絶が生じているのかどうか知りたい。

「松葉蘭 玉龍角の斑」
例年、現状維持であった。つまり1本枯れ、1本上がるといった塩梅。

「玉龍角の斑」 

なんと今季は6本も新芽が上がり、かつかつてなかった程太い(最大1.5倍くらい)のもある。中軸品種の筈なのだが細軸でおかしいとは思っていたが、肥培しないとダメだったのだ。

だが、今まで肥培していなかった訳では決してない。大量の化成肥料を乗せ、大量の水もやっていたのに全然効果がなかったのである。早い話が吸収出来てなかったのだな。 

怪しい肥料や濾過装置の宣伝みたいだが、普段再現性のない趣味の実験ばかりしている中でこれだけ結果が伴うのは我ながらそうそうないよ。糖なのか可溶化されたリン酸なのか知らないが、マジで何かが効いた。カサカサしていた草肌もツヤが出てきているものがある。単に葉面散布した糖が残ってベタついているだけかも知れないが、ワックス的なものも出ているのだろうか?

特に麒麟角はもともとテカテカしていて蝋細工のようで保湿効果のせいか他のマツバランよりも乾燥に強いのではないかと推測している。

なお、菌培養液(特にラン菌)は葉面散布しない方がいいみたい。塩など問題外だと思う。ただし、塩分ストレスで生存本能が活性化された可能性も捨てきれないでいるにはいる。また、マツバランには塩分はそれ程問題でない気もする。潮風の吹きつける久能山東照宮にも生育しているようだし、シドニーのオペラハウスにも着生しているらしい。

「植物の進化形態学」著:加藤雅啓氏の第四章「地下茎」によるとマツバラン(プシロトゥム・ヌドゥム)の地下茎は他の現生植物の器官とは異なり、中部デボン紀の古生マツバラン「Psilophyton crenulatum」の地上茎・地下茎の分裂組織の性質を残している可能性があるとのこと。その形態の研究の為に水耕栽培(曝気)をしたそうな。

マツバランが水を好むことは知っていたし、水中でも栽培できるらしいことも知ってはいたが、陸棲化が進み始めた頃の化石植物と地下茎の構造が同じであれば海水への耐性もあるのではないかと思わないでもない。なお、「プシロフィトン・クレヌラトゥム」の地上茎はぐちゃぐちゃで規則性がないように見え石化品種の「太平楽」や「麒麟角」をトゲトゲしくしたような感じである。マツバランにはトゲっぽい突起があるものがあるが、コレと同じ組織だとすると納得かも。


「プシロフィトン・クレヌラトゥム」

upside down?
Psilophyton crenulatum (参照:イェール大学 ピーボディ自然史博物館
「麒麟角系の実生株」
こちらの新芽の上がり方も半端ない。シダ類の日照斑は日焼けだと解釈しているが曲折した枝ぶりを見るにこれは日照不足。にも関わらず黄色に色揚がりする。どうやら成長中の枝がこうなるよう。

左側から生えているものが本体、太軸ではあるが「門かぶりの松」のように横にひょろひょろと枝が伸びる性質がある。中央の新芽もその傾向があるのでこの個体の「本芸」とも言えるのかな。

対して右側のやや矮性のものは同じ株だと思うが別物かも。本体と一緒に別の根茎を植えこんだかどうか今となっては定かではないが、太さも2倍位ある。何せ実生ものらしいなので良く分からないが、麒麟角の元々の性質を考えると同じ傾向である。

「全体像」
老化してきたが本体(右側)はまだ無事。
液肥の効果か本体の枝先も伸長しているようだ。
新芽は全体的に太く伸びているのが分かる。


「マツバランの一生」 Plant Science 4 U

0 件のコメント:

コメントを投稿